自分自身の過去の法令違反について告白するのはかなり気が引けます。
とりわけこのサイトは法律に関することをテーマにしていますから尚更です。
私としては過去のことは反省しつつ、読む方の印象に残って欲しいのでエピソード混じりで解説していきます。
今回のテーマは「入国審査時の上陸拒否」となります。
実際に起こったこと
20代の頃はロサンゼルスに住んでました。
当時大学生でしたから言葉や学費の問題に直面してなかなか大変な日々でした。
それでもなんとか卒業まで漕ぎつけることができ嬉しかったのだと思います。
その勢いで友人とダウンタウンに繰り出しかなりお酒を飲んでしまい・・・
運転をしていると警察に止められ、結果的に2日間を留置場で過ごすことになりました。
その日はちょうどクリスマスイブ。留置場は人で溢れかえり大変な目に遭いました。
これ以降、自分にはこの記録が一生ついてまわるという意識があります。
さて、今度は日本国籍では無い方が日本に来る時のことを考えてみます。
中には過去の日本在留や本国での履歴に不安があり入国審査が心配という方はいるでしょう。
ということで、日本の入管法の基本的な考え方を知って頂き参考にしてください。
入国の可否について入管法の5条を見てみます。
大きく分けて次の6つの場合が上陸拒否事由となっています。
- 保健・衛生上の観点から上陸を認めることが好ましくない者
- 国又は地方公共団体の公共の負担になるおそれがある者
- 反社会性が強いと認められることのより上陸を認めることが好ましくない者
- 日本国から退去強制を受けたこと等により上陸を認めることが好ましくない者
- 日本国の利益又は公安を害するおそれがあるために上陸を認めることが好ましくない者
- 相互主義に基づき上陸を認めないもの
1. 保健・衛生上の観点から上陸を認めることが好ましくない者
・感染症に罹患している患者で症状が見られる場合
・エボラ出血熱やペストやラッサ熱などが該当する「一類感染症」
・コレラや細菌性赤痢、腸チフスなどが該当する「二類感染症」
・新型インフルエンザ等感染症など
すでにこれらの症状がある場合は病気の拡散を防ぐためにも上陸は拒否されます。
2. 国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者
・貧困者、放浪者や重症患者で治療費の支払い能力がない者等が公共の負担になる者に該当します。
そのような方は入国後すぐに生活保護を受けることが予想されますので上陸が拒否されます。
その本人の支払い能力と同じく、身元保証人や扶養者がいる場合にはその方の支払い能力も審査されます。
また、日本で雇用される予定なら、用意された雇用予定証明書の信憑性が問われることもあります。
3. 反社会性が強いと認められることにより上陸を認めることが好ましくない者
・過去の犯罪歴により上陸が拒否される
条文は以下のようになっています。
入管法第5条4
日本国又は日本国以外の法令に違反して、1年以上の懲役若しくは禁錮又はこれに相当する刑に処せられたことのある者。ただし、政治犯罪により刑に処せられた者はこの限りではない。
ここで注意すべきは、日本国内と日本国外の両方が対象ということです。
つまり本国にいる間の犯罪歴も対象になります。
・「刑に処せられたことがある者」の定義
刑に処されたことのある者とは、実際に刑に服した者に加えて、執行猶予期間中の者、執行猶予期間を無事に経過した者、刑法の規定により刑の言い渡しの効力が消滅した者及び恩赦法の規定により刑の言い渡しの効力が消滅した者までも含まれます。
日本国内や本国で1年以上の判決が出たことがある場合は、日本国内の秩序に影響があるとして入国が拒否されます。
入管法第5条5
麻薬、大麻、あへん、覚醒剤又は向精神薬の取り締まりに関する日本国又は日本国以外の国の法令に違反して刑に処せられたことのある者
5条4と同じく日本国内と日本国外両方とも対象です。
5条4の場合は1年以上の刑ですが、薬物関連の犯罪は1年以上や1年未満などの期間は関係ないです。
過去に一度でも刑に処された場合は入国拒否事由に該当します。この刑の中には罰金刑も含まれます。
入管法5条7
売春又はその周旋、勧誘、その場所の提供その他売春に直接関係がある業務に従事したことがある者(人身取引等により他人の支配下に置かれていた者が当該業務に従事した場合を除く。)
売春行為を実際に行なった本人は入国拒否事由に該当します。
本人に加えて、売春に関連する業務に関連していた人物も同じく入国拒否事由に該当します。
4. 日本国から退去強制を受けたこと等により上陸を認めることが好ましくない者
入管法24条の事由に該当して過去に日本から退去した場合、一定期間が経過するまでは上陸拒否されます。
上陸拒否期間は1年、5年、10年と永久の4つの区分が設けられています。
・上陸拒否期間が1年のケース
過去に出国命令制度を利用して出国した場合。
過去にオーバーステイなどになった場合該当します。
不法残留以外の退去強制事由が無い条件で、自ら入管に出頭した場合、通常5年の入国禁止期間が1年に短縮されます。これが適用されるには過去に退去強制歴が無いのが前提です。
・上陸拒否期間が5年のケース
不法入国者、不法上陸者、在留資格を取り消された者、不法就労助長者、売春関係業務従事者、退去命令違反者、退去強制された者など。
・上陸拒否期間が10年のケース
リピーターの方は、退去強制された日から10年間。
リピーターとは過去に退去強制や、出国命令を受けて出国したことがある者。
・上陸拒否期間が永久のケース
日本国または日本国以外の法令に違反して1年以上の懲役または禁錮等に処せられた者や、麻薬、アヘン、覚醒剤等の取り締まり取り締まりに関する法令に違反して刑に処せられた者
5. 日本国の利益又は公安を害するおそれがあるために上陸を認めることが好ましくない者
法務大臣の裁量により、日本の利益や公安を害すると認められる相当の理由がある場合には上陸が拒否されます。
6. 相互主義に基づき上陸を認めないもの
上陸拒否事由に該当しない場合でも相互主義に基づき上陸が拒否されることがあります。
まとめ
今回は上陸が拒否される事由について解説しました。
特定の法令違反をした過去があっても一律全ての人を拒否するもではないことが特徴と言えます。
仮にオーバーステイの履歴があっても、そこに至るまでの事情は人それぞれです。
それでも入国を希望するならば経緯を自ら説明し証明する必要があります。
残念ながら過去の履歴について消すことは出来ませんし在留資格取得に影響します。
ですから、まずは悔い改めて真摯な反省を示すことが重要です。
その上で、弁護士や行政書士等の専門家の知識を借りることが大切になると思います。
入国後は届出を忘れずに