帰化と国籍離脱

 

自分の経験から思うこと

 帰化は英語でNaturalizatiionと言うようですが、正直あまりピンとこない言葉です。

私がアメリカに滞在していた時はグリーンカードと永住権の話が多かった記憶があります。

ただ、ステータスに関することは仲間同士と言えどもセンシティブな問題です。

一旦申請したのち、何年も待って不許可だった話を聞くたびにやるせいない気持ちになりました。

せっかく弁護士に依頼したのにお金だけ取られたなど似たような話が沢山ありました。

 

 20年前の自分といえば、日々奮闘しながらも、相談する相手が欲しいなとぼんやりと考えていました。

結局、最終的には日本に帰国するという決断をしましたがそれについて後悔はありません。

まったく後悔は無いものの、良い相談相手がいたら違った結論になっていたかもしれないと思うことはあります。

実はビザの相談に取り組むきっかけになったのは過去のこのような自分の経験にあります。

 

 

帰化に対する迷い

 さて、長く一つの国に住んでいれば、ビジネスが拡大して行くこともあると思います。

生きるため、家族のためですから働くモチベーションは当然強いはずです。

また、独身で来た人も、後に結婚して家族が増えます。

それからしばらくすると子供が進学という状況も考えられます。

その大きくなった家族のために不動産を購入する機会もあるでしょう。

 

 若い頃に外国に渡って、がむしゃらに頑張るうちに気がついたら帰化できる条件が整っていたら?

今後のビジネスや家族のことを考えると思い切って日本国籍を取得した方が良い。

それは頭では理解しているけれども当然迷いもあるはずです。

生まれた国との繋がりも断ち切りたくないと考える人は多いのではないでしょうか?

特に母国にいる家族、親類との絆を大切にする国の出身であればなおさらです。

 

 

永住と帰化を比べると

 国籍を変更しないで日本に住むのであれば、在留資格「永住者」を取得すれば事足ります。

永住許可があれば、在留期間や活動内容を制限されることなく日本に滞在できます。

そうすれば、他の在留資格に比べれば大幅に活動の制約が緩和され生活しやすくなります。

ただし、あくまで緩和されるだけなのです。

つまり、「永住者」は数ある在留資格の一つに変わりないということです。

永住権についてはこちら

別の言い方をすれば、在留資格はあくまでも日本国政府に滞在を許可された状態と言えます。

単純比較はできませんが、許可されて滞在するのと、権利として滞在できるのは違うことはご理解いただけるでしょう。

 

当たり前ですが日本人は誰かの許可をもらって日本に住んでいるわけではありません。

 

 

 

帰化のための条件

 帰化のこととなるとどうしてもメリットやデメリットの話になりがちです。

一度調べてみた方はわかるはずですが、そのような比較サイトが山ほどあります。

それはそれでわかりやすくて良いなと思います。

その代わり母国とのつながりについて言及したものは少ない気がします。

①二重国籍について

 帰化をするにはもちろん条件があります。その中でも二重国籍を防止するための条件は注意が必要です。

それに該当するのが重国籍防止条件(国籍法第5条国籍法第5条1項第3号)です。

内容を要約すると以下のようになります。

 

『帰化をするには現在無国籍の状態か、帰化後は現在の国籍を放棄する必要がある。例外的に本人の意志によって放棄できない事情があれば国籍を放棄しなくても帰化が許可される場合がある』

 

国籍法では日本国籍を取得する際は、現在の国籍を放棄して国籍を一つにしなければならないとなっています。

これではなぜ二重国籍は予防するべきものなのかわからないのでもう少し説明をします。

 

国籍を一つにしなければならないと考えられている理由はいくつかあります。

 

a. 一つは外交保護権のこと

日本のパスポートを見るとこのような記載があります。

「日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の諸官に要請する」

これにより、海外で日本人がトラブルに巻き込まれた際や、損害を被った際に賠償責任の話になり得ます。

仮に二重国籍で、どの国籍国に賠償の責任があるのかはっきりしないのは状態は非常に厄介です。

それ故、国家間のトラブルになる可能性があることは避けるということが考えられます。

 

b. もう一つは身分関係の管理の問題

一つの例を出します。国籍が2つある男性が、それぞれの国で違う女性と婚姻の届出を出します。

様式が整った書類が出されれば受付がされてしまい結果として重婚になります。

外国で結婚した場合は、当事者それぞれの出身国に婚姻の届出がきちんとされていれば重婚は起こりにくいでしょう。

しかし、それもあくまでも届出をしたら起こりにくいという話です。

それが重国籍者の場合、届出がされていずれも正式な手続きだったならどうなるでしょう。

いずれも正式な婚姻で、同時に重婚というのは複雑な状況に違いありません。

これでは管理の枠から当然外れてしまいます。

 

c.  国によっては兵役義務が絡んできます

2つの国で義務を果たすべきなのかどうか簡単な問題ではありません。

 

 

結論

 日本国籍を取得する(国籍を放棄する)というのは大きな決断です。

実行するには勇気が必要です。

そこに向かって進もうとしている人は尊敬に値する人だと思います。

 

 将来日本に帰化すべきか悩んでいて相談相手が必要でしょうか?

そんな時は思い出していただきぜひ気軽に声をかけてください。

手続き可能かどうかも重要なことですが将来のことも大切です。

ベストな選択をするお手伝いができればそれに勝る喜びはありません。