帰化するための要件

帰化の要件

 

 現在、日本にはさまざまな国の人たちが住んでいます。

そのような外国籍の方々が日本国籍を取得することを「帰化」と言います。

手続きとしてそれを願い出ることを「帰化許可申請」と言い、申請手続きは法務局で行います。

申請のためには多くの書類の収集から始めなくてはならずかなりの労力が必要です。

これら収集した書類を基に申請書を作成し法務局に提出後、審査結果を待つことになります。。

申請は書類が受領された時点では手続き完了とはなりません。

実際の審査そこからスタートしますので結果が出るまで時間を要します。

仮に提出した時点で書類に不備が無かったとしても必ず許可がされるとは限りません。

なぜなら、許可されるか否かは法務大臣の自由な裁量に任されているためです。

申請から審査を経て、本人に許可や不許可の知らせが来るのに1年以上かかることになります。

 

3つの帰化の方法

 

・普通帰化

・簡易「特別」帰化

・大帰化

 

大帰化は現在まで許可された事例がないのでここでは取り上げません。

それよりも一般的な普通帰化と簡易帰化のために必要な条件を確認していきたいと思います。

帰化のためには7つの要件をすべて満たしている必要があります。


普通帰化

 帰化許可申請をするのに必要な7つの要件は、

①住居要件、②能力要件、③素行要件、④生計要件、⑤喪失要件、⑥思想要件、⑦日本語能力要件になります。

 

 

 

  1. 居住要件  引き続き5年以上日本に住所を有すること

 

「引き続き」の意味は注意する必要があります。

国籍法にある「引き続き」とは、継続して途切れることなくという意味です。

仮に日本に5年以上住んでいても、途中で長期間出国すると継続していないとみなされます。

長期出国によりそれまでの滞在年数は中断され、年数のカウントがゼロに戻ってしまいます。

長期出国かかどうかの具体的な日数の目安ですが、5年間のうち出国している期間が連続して90日以上無く、

かつ、1年間のうちトータル日数で100日以上日本を離れていないことが目安になります。

また、5年間のうち3年間以上は就労系のビザで働いている必要があります。正社員や派遣社員として就労系のビザで働いているのが条件です。アルバイトは対象になりませんので注意が必要です。

 

 

この居住要件は次の①〜⑥いずれかが当てはまる場合は免除されます。

7つの条件を全て満たしていなくても帰化の対象になるのでこれを簡易帰化と言います。

簡易帰化は、申請者の日本とのつながりが考慮されて要件が緩和されます。

 

 

 

① 日本国民であった者の子(養子を除く)で引き続き3年以上日本に住所または居所を有するもの

② 日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く)が日本で生まれたもの

③ 引き続き10年以上日本に居所を有する者(そのうち1年以上就労していること)

④ 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するもの

⑤ 日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有するもの

⑥ 日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有するもの

⑦ 日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時に本国法により未成年であったもの

⑧ 日本の国籍を失った者(日本に帰化した後日本の国籍を失ったものを除く)で日本に住所を有するもの

⑨ 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有するもの

 


 

 

  1. 能力要件    

 申請をするには18歳以上で、かつ本国法でも成人でなければなりません

ただし、④、⑤、⑥、⑦、⑧、⑨のいずれかに当てはまる場合は、簡易帰化の条件が適用され能力要件は免除されます。

未成年者は単独で帰化許可申請はできませんが、親と同時に申請をして親の許可がされる場合には日本人の子になりますから能力条件は免除され、結果として申請が可能になります。

 


  1. 素行要件

 普段から真面目に日本の法律を守って生活しているかということです。

ポイントは犯罪歴などの前科の有無、交通事故歴、税金の納付状況などになります。

前科や交通違反があると必ず不許可になるわけではありませんが、そのような履歴は無い方が望ましいと言えます。

 


  1. 生計要件

 自分の収入や、自分が働いていない場合は家族の収入で生活していけるか(赤字でない)ということです。

一旦緩和傾向にあった生計要件ですが、永住資格との関係で厳格化され現在は収入の目安が存在します。

おおよそ300万円の年収が目安になるでしょう。

この場合、仮に自分が無職であっても配偶者の収入と合算することが可能です。

 

また、転職を考えている方は時期を慎重に検討する必要があります。

申請の前後1年間は転職はしないようにしましょう。

 

 

⑥、⑦、⑧、⑨のいずれかが当てはまる場合は簡易帰化の条件が適用され、この生計条件は免除されます。

 


  1. 喪失要件

 二重国籍を禁止する条件です。

日本に帰化するならば国籍を2つ持つことはできません。

日本国籍を取得する際は現在(母国)の国籍を喪失する必要があります。

 

 


  1. 思想要件

 帰化を希望する場合、政府や憲法を暴力で破壊するような主張、思想がないことが必要です。

テロリストや反社会勢力の方は帰化できません。

 


  1. 日本語要件

 日常会話や読み書きの能力が求められます。

帰化の申請後に法務局で面接が行われますが、面接官と通常の会話ができれば問題ありません。

求められる目安は小学校3年生以上の日本語能力、もしくは日本語能力試験で言う3級(N3)レベルです。

 

 


まとめ

まずは自分が帰化の条件を満たしているかを確認が大切です。

申請自体は回数制限がないので何度でも可能です。

一旦自分でやってみてダメだったら誰かに相談という考え方も可能ですが、

結果が出るまで時間がかかるのはリスクと言えるでしょう。

時間と労力を考えると、最初に許可の可能性を見極めることが大切そうです。

国籍の取得は人生の一大事です。慎重に、しかも確実に手続きを進めていただきたいと思います。